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Theatre E9 Kyoto [Theatre E9 Kyoto]

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「木津さんのお仕事は夢を与えるお仕事ですね。」
Theatre E9 の忘年会でこんな言葉をかけて頂いた。
「とんでもない!全く逆です。僕がこの方達から大きな大きな夢を貰っているんです。」
とお答えした。これは謙虚でもカッコつけでもなんでもなく、全くの真実。

このお仕事だけでなく、全てのプロジェクトがそう。

鵠沼海岸の踏切の側にある小さな事務所の扉を叩くお客様は、
皆さん大きな大きな夢を抱えて、狭い階段をエッチラオッチラいらっしゃる。
その夢を形にするお手伝いをするのが、建築家としての僕の仕事。

この仕事の何と幸せなことか!

実は独立前は建築設計の仕事とどう向き合うべきか、随分悩んだ。
建築家として独立してやっていく為の「芯」のようなものが定まっていないと感じて悶々としていた。
そんな中、1つのお墓のデザインをさせていただいた事が、大きな転機となった。
亡くなったのは、小さい頃から自分を可愛がってくれたおじさんだった。
一年経ってもまだ哀しみが少しも消えず、泣きながら暮らしていたおばさんの助けにならないかと思い、
彼女の座る小さな石を墓石の前に据えた。
若い頃建築家に憧れていたと言うおじちゃんが、もし自分のお墓を作るなら、
きっと自分の為ではなく、残される最愛の人の為に「居場所」を作ってあげたいだろうと思った。

ああ、そうだ。
建築家というのは、誰かに変わって、誰かの居場所を作る仕事なんだ。
それなら一生をかけて追い求められる。
ようやく「芯」が見つかった。
こうして僕は駆け出しの建築家になる事が出来た。

その為に僕は1つの夢を諦める決意をした。
「劇場を設計したい」という夢を。
その為に就職を決めた大きな設計事務所を離れる事になるから。

独立して10年が経ち、沢山の人から夢を貰って、その夢の大きさに導かれるように育てられてきた。

そして独立して10年目の夏に京都で、
かつて僕が一度手放した、「劇場をつくる」という夢を抱えた人達に出会った。

建築家は自分の夢を追うのでは無い。誰かの夢に寄り添いそれを形にする。
そうやって、最期まで、この幸せな写真の様な時間を、共に分かち合いながら、誰かの居場所を作って行く。
そうやって一緒に劇場を作っていけることの幸せをしみじみ感じました。
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