SSブログ

尾鷲の森へ 

三重県の尾鷲に行ってきました。

写真家でありCEPA JAPANという環境団体の代表も務めている
川廷昌弘さんの写真展「人工林の美、林業の現場」の展示構成の打ち合わせに
会場となる熊野古道センターに行ったのです。
owase00.jpg

日帰りはさすがに無理なため、前日の夜に津から車で尾鷲に入り、
山小屋に一泊して林業の現場を体験する機会に恵まれました。

そもそもこの写真展は、
速水林業代表の速水亨さんと川廷さんの出会いをきっかけに
江戸期から続く尾鷲ヒノキの植林地すなわち「人工林」に
川廷さんが何年も通ってとり続けた写真を展示するものです。

川廷さんに同行して半日ほどヒノキの山を歩いて驚きました。
これまでイメージしていた人工林が全く誤ったものだということが分かったのです。
「人工林」と聞くとその名の通り、
人工的である種排他的な風景を想像してしまいがちです。

しかし実際は、驚くほど多様な生命にあふれた豊かで美しい場所だったのです。
owase01.jpg

計画的に間伐された林の地表には、さんさんと日の光が降り注ぎ、
ウラジロシダなどのシダ類が埋め尽くすように地表を覆っています。
owase02.jpg
やまのそこかしこにかなりの樹齢のコナラなどの広葉樹も多く自生しています。
山に振る雨を集めた沢には沢蟹が住み、
朽ちた立木にすら、たくさんの昆虫を集めるコアとなる役目があるそうです。

その風景が人工的に生み出されたものだということが、俄かに信じ難いくらいです。

山から下りた後、この森を代々守り続けている速水林業代表の速水さんに直接お話を聞かせていただくことができました。
速水さんは政府による事業仕分けのメンバーであり、環境省の委員を務めている方で
そのお話は、私の筆力では到底欠きつくせないほど
広く深い見識に満ちたもので、大変勉強になりました。

人工林というと、その単一な植生が生態系を乱すという議論をよく耳にしますが、
問題なのは人工林そのものではなく、
計画的な管理が行き届いていない人工林が増えているということなのだそうです。

きちんと管理された人工林は自然の生態系を駆逐することなく
そこにオーバーレイするような形でうまく折り合いをつけながら共生しているのです。

速水林業で働く皆さんはとてもいい顔をされていました。
お聞きすると、代々この職業につかれている方が多いそうです。
父が植えた苗木を子が育て、孫の代になって伐採することの繰り返しが
当たり前のように受け継がれていることに
気負いのないしかし確固たる信念や使命感のようなもの感じました。

まさに持続可能な社会や産業の在り方が実践されているのが林業の現場なのです。

100年という単位で山守り続ける林業家の誇り高い姿に感銘を受け
林業という窓を通して見る世界の奥深さに触れることのできた旅でした。

川廷さんの写真展は美しい人工林の風景と
それを守り続ける人々の姿を見事に切り取って見せてくれます。
IMG_7167.jpg
(撮影:川廷昌弘)

各地のキャノンギャラリーを巡回しており、
銀座展はすでに終了してしまいましたが、
この後大阪、名古屋でも開催します。
尾鷲での展覧会は来春となる予定です。
ぜひ観にいらしてください。

展覧会の詳細はこちら↓
http://cweb.canon.jp/gallery/archive/kawatei-forestry/index.html
川廷さんのブログはこちらです。↓
http://kawatei.seesaa.net/



nice!(2)  トラックバック(0) 

nice! 2

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。